ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

2020-03-29(Sun)

 もう明後日には退院できる。カウントダウンもゴールに近い。今は目覚める頃にまだ頭の奥に鈍痛を感じるが大したことはなく、目覚めてしまうともう気にならない。
 朝食を終えて病室の外に出て窓のところに行ってみると、外は雨だった。それがしばらくするとみぞれに変わっているのがわかった。
 ずっと病院の中にいるので、「今日は暖かい」とか「今日は寒くなった」とかいう感覚はまるで持てないのだが、看護士さんは「昨日はあんなに暖かかったのに、今日は真冬みたいだ」と言っていた。こういう日に自分の部屋にいたならば、寒くて寒くて凍えそうになっていたのではないかと思う。病院に入院していてよかった。COVID-19のこともあるし、病院はわたしにはシェルターだ。

 「どうなっているだろう」と、ちょくちょく窓際に行って外の様子を眺めてみるのだが、10時ぐらいには完全に雪になっていて、ほとんど吹雪のように見えた。桜はまだ散り始めてはいないようだが、「桜吹雪」とリアルな「吹雪」を共に体験できるところだった。

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 降り方が激しいので、11時頃には4階の外のスペースは一面にシャーベットを敷き詰めたみたいになってしまった。

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 午前中に昨日のように階段の昇り降りのトレーニングをやり、これなら大丈夫だろうとの感触を得た。そして今日の昼食は「さわらの山椒焼き」と「冬瓜のそぼろ煮」。さわらという魚も今まで食べた記憶はないけれども、けっこうおいしかった。
 昼食を終えてまた外を見てみたら、もう雪はやんでしまっていた。午後は娘が持ってきてくれた『キルヒャーの世界図鑑』という本を読み終えた。著者のジョスリン・ゴドウィンという人は本来は音楽学者で、まあ何にでも手を出すキルヒャーという人の、その音楽論に惚れこんでこの本を書いたらしいのだが、別に音楽に特化した内容でもなく、何よりもキルヒャーの著作からの豊富な図版が楽しかった。次はもう一冊持ってきてくれている、『人形の文化史』という本を読み始めた。著者の異なる9篇のエッセーを集めたもので、第1部は伝承民話の中の人形、リラダンの『未来のイヴ』解読、そしてゴーレム伝説についての3篇で、まずは伝承民話篇を読んだが、これはかなり興味深く読んだ。一冊全部読みたいが、もう明日一日しかないから読み終えられないことだろう。

 夕方には、外に積もっていたシャーベットのような雪は早くもぜ~んぶ融けてしまっていて、これが昼ごろには大雪だったなどとはまるで想像もつかないことになっていた。
 夕食は「鶏肉の唐揚げ」に「生野菜サラダ」と、下界でもよく口にする珍しくもない献立で、これは「あんたもそろそろシャバに戻るのだから、シャバの食べ物の味を思い出すように」という老婆心のあらわれなのだろうか。