ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『日記』フランツ・カフカ:著 近藤圭一・山下肇:訳(旧版「カフカ全集6」)

 1910年、カフカ27歳の日記から、死の前年1923年までの日記、そして1911年、12年の旅行記。単に「日記」というのではなく、小説のエスキース的な断片も多く含まれている。

 前に『城』や『審判』などの未完の長編を読んだとき、「なぜカフカという人は、こういう<コミュニケーション不全>とも取れるこんがらがった<対話>を取り入れるのだろう?」と思ったものだったが、こうやって彼の『日記』を読むと、そんな<コミュニケーション不全>というのは、カフカの日常茶飯事の思考法だったのではないかと思える。読んでいてつらかった。
 この『日記』のことは、これからも機会あるごとに考え直して行きたいものだと思うけれども、ひとつ、カフカの中では『アメリカ(失踪者)』の主人公のカール・ロスマンもまた、『審判』のヨーゼフ・Kと同じように「死に行く運命にある」と考えていたようで、『アメリカ(失踪者)』の一種独特の「明るさ」に惹かれていただけに、「やはりカフカカフカ、一貫しているのだなあ」と思ったのだった。