ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

文楽2月公演第二部『新版歌祭文 野崎村の段』@半蔵門・国立劇場 小劇場

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 「歌祭文」とは、じっさいに起きた心中事件などを、角付け芸人が三味線を伴って歌ったものだという。この『新版歌祭文』は当時の「お染久松」心中事件を扱ったもので、先行する浄瑠璃から近松半二が書き1780年に初演されたものという。「お染久松」というのは、わたしもそのことばは聞いたことがある。
 物語は、奉公先で店の金を盗まれて故郷の野崎村に帰って来た久松を中心に進み、ここに久松と幼馴染のおみつとで祝言をあげるという話も持ち上がるのだけれども、奉公先で久松と恋仲だったお染が久松を追ってくることから事情が一変する。久松と夫婦になれると舞い上がっていたおみつは久松とお染の事情に同情し、ふたりを救うために尼になる決心をする。けっきょくお染と久松は舟と籠とで別々に大阪へと戻るところまで。このあとにふたりは心中することになるだろう。

 しかしわたしは二番目に登場した鶴澤清治の撥さばきばっかり見ていたので、実は舞台上で何が起こっていたのかあんまりわかっていない。
 やはり鶴澤清治! 音が強靭でしかも柔らかく、時にフリーフォームのインプロを思わせられるような音にもなる。こうなるとブルーズギターとか、アヴァンギャルドなジャズギターを聴いているのとわたしの耳には差異はない(邪道の聴き方ではあろう)。もっと邪道なことをいえば、彼の絶妙な「唸り」は、例えばブリティッシュ・ブルースのギタリストの唸りをも思わせられるもので、まあ文楽三味線の奏者は唸ることも多いのだけれども、この鶴澤清治の「唸り」というのはまた、それだけで「聴きどころ」ではある。
 切り場の太夫はやはり豊竹咲太夫で、三味線は鶴澤燕三。この人の三味線はちょっと骨太だ。終盤に若い三味線が加わっての「ツレ弾き」で、この部分は「名曲」なのだそうだ。まあヘビメタのツインギターのユニゾンみたいなもので、またわたしは「邪道」の聴き方をするのだった。