ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『完訳 グリム童話集 2』グリム兄弟:著 池田香代子:訳

完訳グリム童話集2 (講談社文芸文庫)

完訳グリム童話集2 (講談社文芸文庫)

 この第2巻には62篇の童話が収録。「グリム童話」として世に知られた有名なものはだいたい第1巻に入っていて、この巻収録のおはなしはあまり知られていないものばかり。しかし物語の展開は似通ったものが多い。
 たとえば3人の若い男たちが名を上げるためとか幸福になるためとかで外の世界へ出て行く話がけっこうある。3人は兄弟だったり、なぜか「仕立て屋」だったりするのだが、グリム童話に出てくる男の職業は仕立て屋が多い。それで上の2人はずる賢かったり怠けごころがあったりとするのだが、いちばん下の男は普段から「どんくさい」間抜けと思われている。旅に出ると森の中で3人それぞれの前に身をやつした魔法使いが現れ、たとえばパンをくれとか金をくれとか言うのだが、上の2人は無視をする。下の男だけが親切にしてやり、結果として宝を手に入れたりお姫様と結婚できたりするのだ。そこでまた2人が悪知恵をはたらかせたりするのだが、けっきょくバレてしまうのだ。

 そう、「森」。森こそが、グリムの童話の中で主人公が「この世ならざるもの」に出会うところである。その森はどこまで進んでも果てがなく、永久に出られないのではないのかと思われるのだが、そこには魔女や魔法使いが住んでいる。
 たとえばグリム童話とイギリスの「物語歌(バラッド)」には同じような話もいろいろ出てくるのだが、イギリスの話にはそこまでに超自然的な「森」というものは出てこない。これはじっさいにイギリスには「深い森」というものが存在せず、まさにドイツにこそ「中に足を踏み入れると出られなくなる」深い深い森というものがじっさいに存在するからだろう。ドイツの美術作品を考えるときにも、そこには「深い森」の存在が大きな役割をはたしていないだろうか。