ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『脳の中の幽霊』V.S.ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー:著 山下篤子:訳

 おそらく、わたしは「脳」に障害を持っている。過去の記憶の一部を喪失してしまったし、今でも「物覚えが悪い」。それは「側頭葉てんかん」と診断されたときからのことだが、それ以来そういう「脳障害」の本は読んできた。例えばオリヴァー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』だとか、有名な健忘症患者H・Mについてのドキュメント『ぼくは物覚えが悪い』などを読んだ。
 そもそもがその<側頭葉てんかん>の発作以後、わたし自身が物覚えが悪いものだから、その内容を立ち入って記憶してもいないのだけれども(これはずっと継続する「深刻な問題」なのだけれども)、今回交通事故に遭って強く頭を打ち、意識こそは失せなかったものの、例えば事故当日に搬送先の病院でのやり取りなどの記憶がない。翌日になってバッグの中を見て、「こんな内服薬をもらっていたのか」とかいう風に思う。他にもトラブルの種はあった。これは今までの「物覚えが悪い」ということに輪をかけた<病状の悪化>ではないだろうかと思い、ウチの本棚にあった、脳の機能に関するこの本を読んだ。
 わたしが知りたかったのは、ひとつには今回わたしが遭遇したような<頭の強打>によって、どのような障害が起こるのかということ、そして、以前医師に言われたような<側頭葉てんかん>の症状についての詳細だったのだが、残念ながらそういう症状についての記述は書かれていなかった。逆に、<側頭葉てんかん>の発作を起こした人が、「神」を身近に感じて信仰に目覚めるとか、記憶力がめざましくはたらくようになったとか、そういう話ばかりである。
 わたしが知りたかったのは、<側頭葉てんかん>で過去の記憶を失ってしまったり、記憶力が弱まった人への「助言」とかではあったのだけれども、やはりそういう本ではなかったのだ。無念である。