ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『遠い太鼓』(1951) ラウール・ウォルシュ:監督

遠い太鼓 [DVD]

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 なかなかに面倒な映画である。これは「西部劇」というものではなく、「西部劇前史」というか、フロリダを舞台とするセミノール(先住民)とアメリカ軍との闘争(戦争)をテーマとしており、時代的にもこの映画で描かれているのは1840年前後のことらしい。アメリカ先住民はこの「セミノール戦争」のことを「インディアンのヴェトナム戦争」と呼んでいるらしい。この映画を観ても、それがジャングルを舞台としたゲリラ戦の様相を示していたことがわかる。
 そして、先住民がこれを「インディアンのヴェトナム戦争」と呼んだように、期せずしてこの作品、あのヴェトナム戦争を舞台にした『地獄の黙示録』に酷似したところがあるではないか。

 まるで『地獄の黙示録』でウィラード大尉がカーツ大佐を探し求めるように、この作品でもタッフ中尉という人物が、すでに何年もこの奥地で暮らしているワイアット大尉(ゲイリー・クーパー)のところへと行く。出会ったワイアット大尉はすでにスペイン統治下の土地に同化していて、すでに亡き現地妻とのあいだに男の子ももうけている。ここまでの展開はほんと、まるで『地獄の黙示録』だ。
 ここからはタッフとワイアットが協力して先住民の砦を攻撃し、捕虜になっていたヨーロッパ人を救い出し、共にジャングルの中を追ってくる先住民から逃げるのである。ただただ、ジャングルの中を先に進む。ほとんどが沼沢地帯で、ワニはいるし毒蛇はいるしたいへんである。助けたヨーロッパ人の中にジュデイというわけのわかんない女性もいて、ゲイリー・クーパーとわけのわかんないロマンスを展開もする。

 けっきょく、追ってきたセミノールの長とゲイリー・クーパーとが水中で一対一での対決をして、まあセミノールの長が負ければセミノール勢は皆追うのをやめるだろうということである。ある意味、「先住民撃退」という侵略者的映画ではある。

 何が面白いのかよくわからないということで面白い映画で、先に書いたように『地獄の黙示録』かよ!というところもあるし、延々とつづくジャングルの描写はそれなりに強烈に力があふれているというか、ヘルツォークの作品さえ思い浮かべてしまうではないか。