- 作者: グリム兄弟,池田香代子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
この第一巻には56のおはなしが収録されていて、いわゆる「グリム童話」としてよく知られているものは、だいたいこの巻に収録されている。
基本は「美徳の勝利」みたいなおはなしが多いのだけれども、教訓臭さの希薄なところがいい。嫉妬深い継母が魔女で、美しい娘が虐げられるが、「ステキな王子さま」が娘を救い、魔女を退治するという系統が多いけれども、「なにこのナンセンス」というおはなしもけっこうあって、いい歳こいて読んでいて笑ってしまったりもする。
いちばん気に入ったのは『鼠と小鳥とソーセージ』という話で、「いったいどういう想像力がこ~んな話を思いつくのか?」とあきれてしまう。つまり、鼠と小鳥とソーセージとが共同生活をしていて、すべてうまく行っている。小鳥はたきぎを集め、鼠は水をくんで火を焚いて料理の準備をする。さいごにソーセージが料理の味付け役なのだけれども(だから料理の具材は何なのかよくわからん)、小鳥がいつもいつもたきぎ集め役だということに嫌気がさし、「役割を交代しよう」といい、ソーセージがたきぎを集めに行ったところ、そこらにいた犬に食べられてしまう。鼠が料理の味付け役をしようとしたら熱湯に落っこちて死んでしまう。そのまま火が燃え広がって、それを消そうとした小鳥も井戸に落っこちておぼれてしまうのだ。なんか、すっごいシュールな物語だ。
いくつか掲載されているオットー・ウッペローデという人の挿画が、19世紀的でよろしい。