レーベル「ブルーノート・レコード」は創立80周年になるという。ブルーノートはわたしにとっても思い出深いレーベルだ。わたしの世代はロックの興隆期とジャズの衰退期(?)を同時に体験したわけで、ロックが発展してインプロヴィゼーションとか皆がやるようになったとき、「そんなの昔っからジャズでやってたことじゃん」みたいに、ジャズの方に飛びついたりした。だから「ジャズ喫茶」にもそれなりに入り浸ったりしたし、「ジャズ」という音楽ジャンルへの興味、知識も深まった。そんなとき、「ブルーノート」という老舗レーベルは、わたしなどでも一種独特の「畏怖」の念のようなものを持ったものだった。
このドキュメンタリーは、いろいろな関係者へのインタビューを交えながら、そんなブルーノート・レコードの歴史をたどるというオーソドックスなドキュメント。
このレコード会社は、ドイツから亡命してきたユダヤ人のアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフの二人によって、ニューヨークでスタートした。その後順調に経営を継続するけれども、本来「インデペンデント」レーベルだったブルーノートにとって、逆にリー・モーガンの「サイドワインダー」、ホレス・シルヴァーの「ソング・フォー・マイ・ファーザー」の大ヒットが仇となってしまい、リバティーレコードに権利を売り渡し、その後1971年には営業をストップする。
まあその後も再スタートを切って現在に至るのだけれども、わたしの興味は正直1960年代まで。
ゲストとしてルー・ドナルドソン、ハービー・ハンコック、そしてウェイン・ショーターらが登場し、過去の思い出を語ってくれたりもするし、ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターは現在の若いミュージシャンらと名曲「マスカレロ」のセッションも行う。
ルー・ドナルドソンの、ニコニコとした好々爺然としたトークも楽しかったのだけれども、わたしはこうやってハービー・ハンコックとウェイン・ショーターとが語り合うのであれば、CBS時代のマイルス・ディヴィスとの共演の話をこそ聴きたかったな。
前半はさすがに映像もあまり残ってなく、モノクロの写真とレコード・ジャケットの連続だったりもするのだけれども、そのブルーノートのレコードジャケットはわたしにも思い出深いものであり、その独特の大きなタイポグラフィーとモノクロ写真を組み合わせたデザインは、ひとつの時代を象徴するものだっただろう。スクリーンに映し出されるそんなジャケットの連続はわたしにはほとんど「早押しクイズ」みたいなもので、「これはあのレコードだ!」とか瞬間的に思いながら観るのだった。