ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

イデビアン・クルー『幻想振動』井手茂太:振付・演出 斉藤美音子・井手茂太:出演 @池袋・東京芸術劇場シアターイースト

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 ちょうど去年の今頃世田谷パブリックシアターで再演された、エポックメイキングな傑作『排気口』に続く新作。この新作はほとんど井手茂太と斉藤美音子とのデュオ作品というか、そこに場面によって「イデビアン・クルー」名義ではない「エキストラ」が絡む。
 劇場中央に置かれた舞台を三方から客席が囲むという舞台設置で、その舞台上は客入れ時はブルーシートに覆われているのだけれども、登場した斉藤美音子がブルーシートを取り去ると、そこには舞台から一段高くなった畳敷きの「六畳間」。‥‥やはり、『排気口』につづいて「和風」な空間世界にこだわったのだろうか。まあ観客の一人としてわたしもそういう展開を期待してもいたのだけれども。

 斉藤さんは薄青のシャツにやはり青のロングスカートといういで立ちだけれども、井手さんは緑地にオレンジとか黄色の渦の描かれた、パジャマみたいな上下(衣装担当はひびのこづえ)。お得意の、コントめいたストーリーが設定されているようなやり取りが「ダンス」に絡む。ただ、「どう見ても背後にストーリーがありそうだ」と思いながらも、それがどんなストーリーなのかわからない。「この二人は何をやっているのだ?」と思いながら観ているわけだけれども、逆にそこに想定されたストーリーがまるで了解不能だからこそ、この作品の面白さがあるのではないかと思った(そういうところでは『排気口』の延長で観てはいけないのだ)。

 完全な暗転のあと二人とも衣装を替えて登場し、斉藤さんは赤いドレス、井手さんは黒のアスリートっぽい上下。ここで音楽は突然に「ボレロ」になり、まさに斉藤さんをメインにベジャール的に「ボレロ」をやってしまう(クライマックス近くに井手さんが「オレに主役をやらせろ」的な割り込み場面もあるが)。
 なぜか、この「ボレロ」が終わると、舞台空間からはより「日本的」空気がただよい、「今までの舞台は六畳間の部屋の縁側から見られた<夏祭り>的幻影だったのか?」という感じにもなる。そしてラストはまさに<夏祭り>の空間へ?

 ‥‥観終わって詠んでみる。

 六畳の 縁側から見る夏祭り それともこれは午睡(シエスタ)の夢?