ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『THE GREAT TAMER』ディミトリス・パパイオアヌー:コンセプト・ヴィジュアル・演出 @与野本町・彩の国さいたま芸術劇場

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 わたしはこのディミトリス・パパイオアヌーというギリシャのアーティストのことをまるで知らなかったが、2004年のアテネ・オリンピックの開会式、閉会式の演出を観た人の評判を聞いたし、ピナ・バウシュ亡きあとの「ヴッパタール舞踊団」に振り付けたことで、一種の「レジェンド」になった人らしい。わたしの周囲にこの公園を楽しみにした人も多く、わたしもそんな評判によって観ようという気になったもの。

 舞台は奥へとなだらかな傾斜をもってせり上がる、3×6判のグレーのベニヤ板のようなものが一面に敷き詰められ、そのベニヤ板をあちこちめくると、そこに穴が開いている。まるでビックリ箱のように、その穴からいろいろな人が出てきたり、穴の中に潜って行ったり。これは「ダンス」というものではなく、人の身体の描き出すコラージュのような、おおらかな「動くシュルレアリスム絵画」のような作品ではないかと思った。複数の人物のそれぞれが「胴」「腕」「足(腿と脛)」のパーツを組み合わせて奇怪な人間像をあらわすシーンなど、シュワンクマイエルの映像作品を思い浮かべるし、男たちの組み合わさった「群像劇(?)」は、福沢一郎の絵画作品が動き出したようにもみえる。ちょっとした「奇想」のオンパレードである。
 そこに例えば「ギリシャ彫刻」であるとか、「レンブラント」であるとか、キューブリックの「2001年」であるとか、いろいろな名作の場面がはめ込まれて行く(わたしは何から何までは捉えきれない)。

 ラストに、そのベニヤの下の穴から「人骨」が出てきて、その頭蓋骨が先に置いて開かれていた大きな本の上に置かれ、それもまた西欧美術の大きなテーマであった「メメント・モリ」である。
 そもそもこの舞台の発想は、ギリシャで「いじめ」から自殺した少年の白骨化した遺体が発見された、ということから生まれた作品らしい。いっしょに観た友人は、「あまりに何もかも<西欧>すぎる」ということを言っていたが、それは確かなことだと思う。しかしそもそもこの舞台というもの、「ギリシャ時代からの文化の継承」というようなテーマでもあるだろうから、グローバルな視点はさいしょから捨ててしまっているところもあるだろう。
 そもそもの出発が「ギリシャ彫刻」なのだからアレだろうけれども、全裸でかなりハードなポーズを取らされるパフォーマーの皆様方には、ねぎらいの言葉をかけてあげたい気になりますね。あと、「宇宙飛行士」のお人形が欲しくなりました。