ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

国立文楽劇場開場35周年記念 5月文楽公演『通し狂言 妹背山婦女庭訓』第一部 @半蔵門・国立劇場本館 小劇場

        

f:id:crosstalk:20190529170249j:plain:w400
再度「お三輪ちゃん」。

 第二部ではいきなり「山の段」での久我乃助、雛鳥の悲しい悲劇を描き、そのあとは町娘のお三輪の「犠牲」までが描かれたわけだけれども、この第一部では盲いた帝の天智帝の蟄居、いちばんの悪玉は蘇我蝦夷子ではなくてその息子の入鹿だったこと、入鹿を倒すべきは藤原鎌足であり、そこには帝の側室の采女鎌足の娘)の存在が重要であることが示される。また、その生誕に秘密のある入鹿を倒すにはまずは「爪黒の雌鹿」の血が必要であることからの、その鹿を倒した猟師芝六の「忠義」の話、そして第二部の「山の段」につながる久我乃助、雛鳥の出会い、入鹿が久我乃助の父大判事、雛鳥の母の定高に要求する「無理難題」などが語られる。

 今日の第一部でもまた濃厚な話が展開していくのだが、その「鹿殺しの段」で、いっしゅん非常にかわいらしい鹿が登場し、観客席から「かわいい~」という声も聞こえてきた(一瞬で矢に射られて死んでしまうのだけれども)。どうも文楽に登場する動物というのは予想外にかわいらしいというか、わたしが知っているところ(有名なところ)では『本朝廿四孝』での八重垣姫といっしょに狐が舞う「狐火の段」の狐がすっごくかわいらしくて、あのミニチュアのぬいぐるみとかを売店で売ればきっと売れるだろうにと思ったものだったが、気になってちょっと「文楽に登場する動物」というのを調べてみると、この2月に東京でやった『大経師昔暦』には三毛猫が登場していたらしく、その猫がまたリアルでかわいらしいのだった。『大経師昔暦』、観ればよかったな。

     

f:id:crosstalk:20190530154653j:plain:w500
かわいい!
 
 ‥‥それで今回の「令和」初の東京での文楽公演、「国立文楽劇場開場35周年記念」ということだけれども、観ているとどうしても蘇我入鹿の暴君ぶりに安倍晋三を重ねてしまい、文楽協会は安倍晋三への「あてつけ」で今回この『妹背山婦女庭訓』をほぼ通しで上演したのではないかと思ってしまったりもしたのだけれども、それだったらやはり今回の上演で省かれてしまった五段目で、蘇我入鹿が倒されるところまでやって、観客として溜飲を下げたかったものだと思うのでした。