- 作者: 堀秀道
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1999/08
- メディア: 単行本
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前に書いたが、わたしの勤め先で廃棄処分にするというのでもらって帰っていた本で、ようやく読み終えた。
わたしは鉱物への興味などまるで持たない人間だったのだが、「ドイツ・ロマン派とかの鉱物学への親和性とはどういうことなんだろう」などという興味もあったし、知らないことを学ぶのも楽しいことだ。理科系な部分は<よくわかりません>というところもあったけれども、この本の著者の堀秀道という方のウィットの効いた文章、文学系にも及ぶ広い視野とで、まさに「楽しい鉱物学」だった。
この堀秀道氏、鉱石の中で<水晶>こそをいちばんに愛しておられるというか、今先進国の中で「鉱物の趣味」が市民権を得ていないのは日本だけで、それは義務教育の中から「水晶」と「鉱物」の世界がそっくり落ちてしまっているからだとおっしゃる。堀氏が書くのは、「(日本の教育の現状は)かろうじて、花崗岩などの岩石を数点教科書にのせ、お茶をにごしている」わけで、「花崗岩のような岩石を子供に見せて何になるというのか。やはり、鉱物界の‶全権大使‶である水晶を見せて、興味と感動を呼びおこさせなくてはならない」ということになる。熱い思いが伝わってくる。
わたしもまた、水晶というものをしっかりと見た記憶もなく、そういう意味で鉱物学の楽しさがわかっているものではないのだが、この本の後半、さまざまな世界の鉱石をその産地と共に表わした部分が特に面白く、ラピスラズリ、そして翡翠(ヒスイ)、めのうなどの章は興味深くも楽しく読み、「めのうが鎌倉の海岸で採れるのならば自分も採りに行ってみたい」などと、いちばんしょーもない「にわか鉱物学者」になろうしたりするのだった。
ちょうど調べてみて、この著者の堀秀道氏は、この一月に逝去されたことを知った。良い本をありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。