モノクロ、そしてワイドスクリーンだということの印象に残る作品だった。そのワイドスクリーンの画面を、カメラがゆるやかに横移動するシーンが美しい。そして街頭の物音、そして犬たち、そして空を飛ぶ旅客機。
舞台は1970年とかのメキシコシティで(部屋に70年にメキシコシティで開催されたワールドカップのポスターが貼ってあった)、そこに住む白人系大家族(子供が5人)のもとで家政婦として働くクレオが主人公。そんな彼女の大きな「失意」と、海での事件をきっかけとした「再生」を描いたヒューマン・ドラマ。ヒロインを演じるメキシコ系の女優さんがみずみずしい。泣いた。
しかし、アルフォンソ・キュアロン監督というのは「出産」ということにこだわるというか、先日観た『トゥモロー・ワールド』でも長い出産シーンがあったし、前作『ゼロ・グラビティ』なんか、ある意味全編が<受胎>~<出産>の過程のアナロジーともいえるような作品だったし。
余計なことを考えれば、ひとつのメッセージとして「武術などというものは人格形成に何の役にも立たず、ただ反動勢力に利用されるだけではないのか?」ということも読み取れるような。