ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「日本一元気な動物園―旭山動物園8年間の記録」多田ヒロミ/ザ・ライトスタッフオフィス:著

日本一元気な動物園―旭山動物園8年間の記録

日本一元気な動物園―旭山動物園8年間の記録

 動物園というスポットには、今でも微妙な気もちを持ちつづけているところがある。さまざまな動物学を深める「研究所」という側面、遠い地の、日常生活では出会うことのできない動物たちと出会える場という側面、そして、「見世物」意識から抜け出せない興行施設としての側面などと。
 この「見世物」意識では、多くの国内の水族館がいまだにイルカショーなどをやっている現状は悲しくもあるのだけれども、今は動物園のゾウの芸、などというアトラクションもなくなったようで、改善されてはいるのだろうと思う。

 本来の自分の棲地から拉致されて、狭いスペースに閉じ込められている動物たちは不幸だと思ったりもするが、ある種の動物たちは、その本来の棲息地では絶滅の危機にさらされてもいる。今ではもう、動物園でしか繁殖例のない動物も存在するわけだろうし、例えば古い例を引っぱり出せば、野生のシフゾウが洪水などですべて絶滅したあと、中国の皇帝の領内で飼育されていたシフゾウによってその種が存続したなどということもある。今では、シロサイとかゴリラとか、そういう動物園/動物学者の庇護なくしては絶滅してしまうだろう「レッドリスト」動物の数は多いのだろう。

 旭山動物園の、その名まえぐらいは聞いたことがあるが、例えば上野動物園ほどに大きな動物園でもなく、白浜アドベンチャーワールドみたいにパンダがいっぱいいるわけでもない。「見世物」的に動物に「芸」をさせているわけもない。それでも、入園者数は驚異的な伸びをみせている。
 そう、動物園というのは、観客がどこまで動物の視線の中に同化できるのか、みたいなことがあるだろうし、動物の生活する「匂い」の中に入っていくというエキサイティングな感覚、そんな、「人間」もまた「動物」の一種で、同じ地球上で生きているのだという感覚を呼び起こされるスポットだと思う。
 この「旭山動物園」は、まさに飼育係の人たちがリードして、(今ではあたりまえの言葉になった)「ふれあい」ということを重要視し、例えば動物を紹介するプレートにも「手書き」を取り入れて、紋切り型ではない動物たちの「今の状態」を観客に知らしめたわけで、この「手書きプレート」というのは、その後の日本での小規模商店の「切り札」みたいな発展も見せるわけで、ま、これが旭山動物園から始まったことなのかどうか知らないけれども、ちょっと革命的なことだったのではないのかと思う。
 特に「客寄せ」のための希少動物を飼育しているわけでもないのに、上野動物園を追い抜くか?というぐらいの観客動員をやってのけたことは、それこそ、商業的な理由だけではなく、いろいろなマーケティングの上で重要なことだろうとは思う。

 そんなことはいいながらも、そんな動物園で生まれ育った<親子>が、別の動物園での繁殖目的でとか、その仲を裂かれてしまったりすることは、むむむ、やっぱり<可哀想なこと>だとは思ったりもする。