ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「快楽の漸進的横滑り」(1974) アラン・ロブ=グリエ:脚本・監督

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 この原作本(というのか?)はその当時日本でも翻訳が出ていたのだが、映画の方は公開されなかった。それが50年近いときが経って、このレトロスペクティブで日本初公開(過去にシネマテーク的に公開されたことはあったようだけれども)。
 これまでに観た4本の作品はいずれも男性が主人公みたいなところがあって、男性である自分もスクリーンに感情移入して観ることもできたわけだけれども、この作品では男性は出て来ても「脇役」というか、重要な役どころではない(それでも、ジャン・ルイ・トランティニャンとか、マイケル・ロンズデール*1とかの大御所男優のお出ましなのだが)。だいたいのところはアニセー・アルヴィナとオルガ・ジョルジュ=ピコのふたりの女優で展開。アニセー・アルヴィナのひとりパフォーマンスのシーンも多いのだが、あとはこのふたりの女優のレズビアン的な絡みとか。オルガ・ジョルジュ=ピコの胸にハサミが突き立てられて殺害され、アニセー・アルヴィナに殺人の容疑が持たれるらしい展開。しかしその世界はどうも修道院の中とか、そういう閉鎖的世界でもあるようだ。
 ホワイトキューブ的な、ギャラリーのようなスペースで、ほとんどアート系のパフォーマンスなのではないかというような展開(「女拓」もやるのだ)。骨組みだけのベッドのようなものも置かれていたりして、これがとつぜんに海岸に持ち出されて海岸/絶壁での展開になったりもする。胴でふたつに分断された女性のマネキン人形とか。

 どうも解説をちらっと斜め読みすると、ミシュレの「魔女」にインスパイアされた作品でもあるようで、原作本があるように「即興的要素」はゼロ。すべて演出の意向通りに撮られたものらしい。
 つまりこの世界はフェミニティな「秘儀」を描いたもので、先日観たリメイク版「サスペリア」、去年の「ヘレディタリー/継承」へと連なる世界観か。特に「サスペリア」との親和性は高いというか、この「快楽の漸進的横滑り」と「サスペリア」とを、2本連続して観てみたくなるのだった。
 

*1:ジャッカルの日」とか「薔薇の名前」とか、いろんな映画に出ていた名脇役