ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「ヨーロッパ横断特急」(1966) アラン・ロブ=グリエ:脚本・監督

 なんと、主演はあのジャン・ルイ・トランティニャン。どうもロブ=グリエ自身がトランティニャンのファンだったらしいのだけれども、とにかくはトランティニャンのこの作品でのポーカーフェイスぶりを観ているだけでも、その他のおかずがなくってもご飯三杯ぐらいはおかわり出来る(マリー=フランス・ピジェも出てるので、5〜6杯行けそうだ)。
 いちおう、ストーリーというかシチュエーションははっきりしていて、トランティニャンの演じるエリアスという男が、その「ヨーロッパ横断特急」を使って、パリとアントワープ間での麻薬だか何だかの取り引きをするのだという、ノワールものというかスパイものというか。
 そもそもがその特急列車の中で、ロブ=グリエ当人とか前の作品にも出ていたロブ=グリエ夫人のカトリーヌとか、他一名で「映画をつくろう」と話し合っているわけで、そこにトランティニャンが通りかかって、「トランティニャンで行こう!」なんてことになるし、駅での移動撮影の様子も取り込まれて、「映画の中で映画を撮る」という「メタ映画」感満載。
 作品中に「ジェームズ・ボンド映画」の第2作「ロシアより愛をこめて」のポスターがとある部屋に貼られていたように、そういうボンド映画のへのオマージュというか、「ロシアより愛をこめて」では「オリエント急行」だったのを、「ヨーロッパ横断特急」でやってみました、という感じ。
 ここでも「反復」〜「時間軸ずらし」とか、ロブ=グリエお得意の技法は開陳されるし、ダニエラ・ビアンキに拮抗するマリー=フランス・ピジェの「お色気」担当も楽し。ここでもやはり、主人公のエリアスはラストで死んじゃうんだかどうだかで、どうも、ロブ=グリエ映画では、主役の男性はさいごに「死んでしまう/死んだフリをする」というのが続く。それで映画はまたさいしょっから始まるわけだ。